Barで私も考えた-Bar On the Road-

夜な夜なBarカウンターの向こう側で繰り広げられているたくさんのドラマ。
楽しいこともあれば、悲しいこと、辛いこと、びっくりすることなど。
本当に、毎晩オムニバス映画を見ているかのような日々。

私だけが見ている私だけの物語。
それをありのままに書くとプライバシーの問題があるので、
私の主観で、私が夜な夜な見ている出来事のその先を、
「妄想」に変えてつぶやいていこうかな・・・
なんて出来心から始まったお気楽妄想物語です。。。


【孤独と幸せ】

開店早々に入ってきた常連のお客さま3人。
お偉いさんの3人が揃っているということは、街の何かの会合帰り。
時間が早くてお目当ての女子のいるお店が開いてなかったようで・・・
うちのお店では早い時間帯によくある光景。
要はWaiting Bar代わり。

座るなり開口一番、
「酒なんかなんでもいいぞ」
なんてこと言うわりに、
3人それぞれにバックバーを見て自分好みのお酒を好きな飲み方でご注文。
「今日は何を飲みますか？」
なんてこと聞かなくても、
それぞれの好きな酒類も、
好きな飲み方も、
なんなら好みのタイプの女性も知っているけどね。。。
ご注文のお酒を用意しながら、
そういえば久しぶりですね～。
なんてこと言おうものならすぐに
「おや、ほーじゃあるめー。
この前来たじゃねえか、ママには会ってるぞ」
なんて。
おっさんたちとあーだこーだ言い合ったり、
私を困らせるようなことを言ってみたり、
座ってからひとしきり、こういう掛け合いを楽しんでからお酒を口にして
「うまいっ！」
と、一言。

心の中で小さくガッツポーズ。
バーをアテンドする者として、何よりも嬉しい瞬間です。

小一時間話し込んでた3人の内、2人がそわそわし出したので年長の方が
「ここは俺が払うから、さっさと行きなさい」
なんて言われて、2人は早々にお目当てのお店へ。
残った年長の方は檀家周り？があるからと、
彼女？に電話してからタクシーを呼んでお会計。

3人で4000円のお会計ですと伝票を出したら
「お釣りはいいからな。
俺が母ちゃんに捨てられたり、貧乏になったら助けてくれ」
そう言って5000円札を手渡してきたので
私「あら、じゃあそんな日が来るまでこの1000円は取っておきますね」
と言ったら
「経営者に明日の約束はないよ。
ママも経営者だ、今夜まだまだ頑張りなさい」
そう言って次のどこかへ出かけて行かれました。

65歳、仕事もプライベートも現役。
なんていうか、本当に、カッコいい。

この日の出勤前、ちょっとだけ心が穏やかじゃなかった私。
今夜の私はうまく笑えるのかなあ、なんてことを考えつつ・・・
車の中で竹原ピストルさんのカウント10を聞いて心を落ち着かせていました。
お店に入って開店準備してシャッターを開ける瞬間までいろいろ考えていましたが、
開けたらゴングが鳴って？すっかり忘れていつも通り、
心穏やかに私の夜が始まっていました。

経営者は孤独なもの。
なんて言葉、よく聞きます。
男性の場合は、
家に居場所がないとか・・・
女性は、
旦那さんと会話がないとか・・・
何気ない会話の中でフッと見せる孤独感。
みんな、なんとなく人生に物足りなさやさみしさを感じてるんですよね。。。

会いたいときに会える人がいるとか、
家族やパートナーが身近にいる人は小さな幸せに気付いてないだけなんじゃないかな。
例えば孤独を感じる夜があったとしても、
朝起きておはようと言う相手がいるだけでも幸せなこと。
一緒に過ごす誰かがいるだけで、救われる日もある。

私には恋人もパートナーもいないし、
若輩者の孤独な経営者でもあるけれど(笑
毎日毎日、
いろんな人と会っているおかげかさみしいと思っている暇がありません。。。
それでも、女であり、一人の人間として、
時々心がザワついて穏やかじゃない時もあるんですよ。

今夜も、Barで私は妄想してました。
私ぐらいの年になると、あんまり誰かに
「頑張って」と言われなくなります。
目上の方に「頑張りなさい」と言われて背筋が伸びました。
この夜の私は、お客さまの言葉に救われました。
もう一つ、65歳現役のお兄さまの電話の内容を聞いて
あらあらあら・・・この後そういうこと？
なんてニヤついてましたが。。。