葦が閉店しました

創業53年。
塩尻の銘店、
「葦」

当店の階下で営業していた「葦」は
2014年3月30日をもって閉店いたしました。

おにぎりとおでん。
塩尻山賊焼き風からあげも茶碗蒸しも。
毎日食べても飽きなくて。
本当に美味しくて、大好きでした。

子供の頃から当たり前に食べていた葦のおにぎり。

私のお店、
Bar On the Roadを見つけたのも、
毎週葦にご飯を食べにきていて
葦の入り口横のシャッターに「貸店舗」の張り紙を見たことがきっかけでした。

Barを始めようと決めたときも気持ちの半分は
「大好きな葦のおにぎりがいつでも食べられるから」
とか、
「息子が同級生だから」
とか。
なんとなく、そんな「葦」がらみの安心感があったから。

今年の1月末。
おやすみの夜に娘と葦でいつものようにご飯を食べていたら
店主である父ちゃんから「3月でやめるから」という話を聞いて
驚いて言葉が出なくて泣いてしまいました。

もう多分、10年以上前。
雑誌に私が「おにぎりの美味しいお店」という投稿をしたせいで
取材や人が殺到してしばらく大変だったとか、
私がお店の開店前に正式に挨拶に行った時に、
お互いに末永く頑張りましょうねって言ったことを覚えていてくれたり。

父ちゃんと母ちゃんに何度も
「やめないで」と言ったり、
大家さんに家賃の値下げ交渉をしようかとか、
跡取りの息子を説得しようかとか。
いろいろ考えましたが、
やめる事情やこれからのことを聞いたり何度か話しているうちに
「仕方がないことなんだ」と自分で自分を納得させました。

消費税増税。
材料費の値上げ。
72歳という年齢。
後継者がいない。

理由はとにかくいろいろあるけれど。
私の本音は、やめないでほしかった。
私の勝手な願いだったけど、
ずっとずっと、続けてほしかった。

葦が閉店する2~3週間前から毎日シャッターを開けると
うちのお店の前に行列ができていました。
最後の1週間は持ち帰りのおにぎりの予約で17時に開店出来なくて
毎日10升(15kg)のお米を炊いても間に合わなかったとか。

本当に、塩尻市民だけじゃなく、
市内外から葦のファンか大勢駆けつけて惜しまれて惜しまれて
閉店しました。

最終日、お店をお休みにして東京に行っていた私は随分前から
おにぎりの予約をしてあったので閉店時間までにと東京から帰ってきて
最後のおにぎりを買って食べることができました。
でも店内は大混雑していて父ちゃんにも母ちゃんにも何も声を
かけることができませんでした。

閉店した次の日から、
定休日の看板も、閉店のお知らせも何も表示がなくて
看板の電気もついてなくて。
毎晩シャッターを開けるたびに真っ暗な葦の入り口を見ながら
本当に閉めちゃったんだな、とさみしい気持ちになります。

創業53年。
半世紀以上塩尻に根を張って、
塩尻におにぎりの文化を根付かせて、
大勢の人々から愛されみんなの心の根っこを繋いでくれていた葦。

小柄な父ちゃんが握ってくれたあのおいしいおにぎりも、
いつも笑って話しかけてくれた母ちゃんが揚げてくれたからあげも、
おでんも茶碗蒸しも。
全部全部、一生忘れません。

本当に本当に、53年間お疲れ様でした。

最後に、「葦」のメニューに書かれた
「葦」という店名の由来をご紹介します。

葦という名前の由来について

植物のアシ(葦)から取りました。
アシの根茎は地中をはい、
沼や川の岸に大群衆をつくりますが、
当店もこの塩尻という地で自分達の利益だけの為ではなく、
来てくださるお客様同士や私共との和を大切にして、
地域発展にも協力して行けるようにという願いを込めてこの名をつけました。


どうせ捨ててしまうならください!
とお願いしておいた
葦の湯飲み茶わんとおにぎりが乗っていた下駄。
お店の裏口にそっと置いてありました。
私の宝物です。。。




  

2014年04月17日 Posted by おんざろーど at 06:01Comments(0)Bar On the road 食べ歩記